以前見に行ったくるくるさんより、話を聞いたときから見たかった舞台。
そのときも行きたかったのだが、見るに気持ちが至らなかった。後から話を聞いて後悔したのだ。
今回の会場は愛知厚生年金会館。お約束通り、友人達とは駅近くのモス・バーガーにて待ち合わせ。
久しぶりのモス、アロエとライチのフレークシェイクはおいしかった。
アロエが思ったよりも大きく切ってあって嬉しかった。そこで軽く腹ごしらえをして会場へと向かう。
演目は「葵上」「卒塔婆小町」共、三島由紀夫の近代能楽集から。
●葵上
まず何よりも、舞台美術が素晴らしい。ダリを使ってあるのだが、違和感が全然ないのだ。
源氏物語とダリが見事に融合されている。
歪んだ時計が椅子になり、引き出しのあるヴィーナスがコートかけになる。
そして、ベッドの後ろには大きな月の着物。まるで一枚の絵画を見ているよう。
ダリは、女優をかたどった部屋を作った人だけど、この舞台をどう思うだろう。
自分の絵画そのものが舞台になるなんて考えただろうか。
そして、衣装。六条康子の衣装も凄い。松模様の黒いコート。圧巻としか言いようがない。
前置きが長くなったが、舞台について話そう。
三島由紀夫の世界を上手く表現出来る人なんてそうそう無いんじゃないかと思うのだけど、美輪さん凄いです。
原作以上の物を引き出しているんじゃないかと思う。
勿論、舞台自体、戯曲があり、それを演出が役者や小道具,音響,照明を使って表現する。
中には自分の書いた戯曲でありながら、表現仕切れずに終わってしまう場合もあるだろう。
そんな中、美輪さんのこの舞台は、十二分に表現されたと言っても過言じゃないと思う。
最後、光は何かに惹かれるように六条さんのもとに駆けて行った。凄く嬉しそうな笑顔と共に。
何処に行ったのか言えば、いわゆる“向こう側”なんだろうな。
妻の葵は、悶え苦しみ死んでしまった。
安直に考えれば六条さんの生き霊に殺されたと思うが、実際は光がとどめを刺したのではなかろうか。
●卒塔婆小町
“私を「美しい」と言った男は必ず死ぬ”という小町。
最初は醜い老婆だったが、いつしか二十歳前後の美女に変わる。
ここでは、何よりも美輪さんの演技に注目したい。老婆から美女へと変わるところ。
同一人物とは思えないけど、同一人物。
『美しい』と言うなと言われても、我慢出来ないと思う。
前がどんな容姿だったのかなんて忘れさせてしまい、どうでもよくなってしまう。
死んでも本望と思わせてしまうんだろうな。タイトル通り「卒塔婆小町」だ。
彼女の周りにたつのは、墓標のみ。
そして、カーテンコールのワルツ。
男性二人と踊っても負けないのは美輪さんだけなんじゃないだろうか。
小娘にそんなことさせたところで、滑稽になるのが落ちだろう。ただただ呆然と見入ってしまった。
もっと見ていたかったが、緞帳が降りてしまっては仕方なし。
この舞台は、見ても損は無いと思う。また、あったらぜひとも見に来ること間違いなし。