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作 まよ |
開け放たれた窓からは、初夏の微風が絶えず吹き込み、薄いカーテンを揺らしている。
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魔女イデアとその騎士、サイファーと戦った後、魔女イデア―――まま先生に掛けられていた呪縛は解き放たれた。
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しかし、その代わりに。 |
リノアが、動かなくなった。 |
最初の内は、眠っているだけかと思った。
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―――何だよ、それ。
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『絶望』。 |
その時仲間達の顔に、無意識に避けていたであろうこの二文字が表れた。
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しかし、俺は信じない。 |
あのリノアが。
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起きろよ、リノア……… |
(……え…ちゃん……) |
いくらこうして傍に居ても、この耳には、リノアの声が届かない。
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あんたと初めて会ったのは、…確か、SeeD就任パーティーだったな。
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―――「君が一番カッコいいね!」
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―――「やった~!SeeDが来てくれた~!
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―――「カッコわるぅ~、命令に従う?それが仕事?」
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―――「…やさしくない。やさしくない!!」
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―――「素晴らしいリーダーね。いつも冷静な判断で仲間の希望を否定して楽しい?」
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―――「だめだったの、一人じゃだめだったの。わたし、一人じゃ戦えなかったの」
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―――「ミサイル基地でわたし、もう死んじゃうって思った。
そう思ったら、一番会いたかった」
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―――「どうして?どうしてそういう言い方するの?
怒ってるの?ちょっと誤解があっただけだよね?」
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―――「悪いってなんか思ってない癖に!もう話は終わりってことでしょ、それ。 どうしてこうなっちゃうのかな。どうしてなのかな!」 |
そうだったよな。
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『わたしを見て!わたしに見せて!あなたの事が、もっともっと知りたいの!』 |
…正直、うざったかった。 |
周りの奴等も、俺がリノアとくっつく事を望んでいる素振りで、余計に頭が痛かった。
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―――「わたし、戦うから」
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レジスタンスに居ながらも、戦う事を回避しようとしていたリノア。
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―――「スコール、助けてくれてありがとう!」
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―――「聞きたい。スコールが考えてること、知りたいもの」
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―――「行くぞ、スコール!」
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そして。 |
―――「スコール! …リノアが!……リノアが!!」
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(おねえちゃん…)
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また、無くすのか…? |
(………エルおねえちゃん) |
俺は、―――子供の頃を、思い出す。 |
まだほんの4、5歳だった頃、俺は孤児院で暮らしていた。
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俺は、待った。
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―――信じた者に、捨てられる。 |
それは、無知で無力なガキの逆恨みだったのかもしれない。
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『人は、独りだ。他人など、仲間など、俺はいらない。俺は独りでも生きていける』 |
情けないな。馬鹿みたいだ。
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『どんな事があろうとも、決して俺から離れていかないものが欲しい』 |
リノアは、こんな俺でも、いつも引っ付いて来てくれていた。
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もしも彼女がいなくなったら、……誰がこんな俺を必要としてくれる? |
誰が……? |
(ぼく……ひとりぼっちだよ) |
二度と、御免だ。 |
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どこまでも深く広がる空の茜が、目に染みる。
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(俺のこと笑ってるかもな。いや、怒ってるかな?)
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「俺、本当は他人にどう思われてるか気になって仕方ないんだ」
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俺は、再びリノアの身体を背に背負う。
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「スコール」 |
俺を求める声が聞きたい。 |
あとがき | |
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