あとがき

 さて、困った。どう書き出せば良いのでしょう(汗)
 いえいえ、取り留めの無い事を纏まりなく書いていくのは大好きなのですが、 論理的に組み立てる作業が大の苦手なまよにとって、後書きなる文章は非常に難しい・・・(爆)
 ・・・では思い切って、前書きなどすっ飛ばしてしまいますね。
 SALTさんのご好意により、貰って頂いたこの『Moon〜』は、個人的には非常に思い出深いものです。
 FF7というかけがえの無い作品に触発されて作った、まよの初書き物でありますから。
 今回石鹸工場様に晴れてお嫁入りさせていただくにあたり、いくらなんでもあのままじゃ〜ということで、細々としたところに整形を施してから厚化粧させて頂きました(笑)  ※管理人註
 それにしても。改定作業をしていて一番思ったのは、やっぱり私はFF7が好きなんだなぁ、ということです。
 本当に好きになった物って、いつぞやかも書きましたがいつまで経っても色褪せないのですよね。

 話は変わりますが、月。月っていいですよね。
 柔らかくって、綺麗で儚くて。
 ・・・というのも、この『月』のイメージが、エアリスにもあるなぁと思ったのが書いたきっかけです。 (語り出すと長いですよ?苦笑)
 エアリスのイメージ。『夜の月』よりも『太陽』とか『春の日差し』の方が相応しいのでしょうが。
 『月』の綺麗でふんわりとした優しさと、儚さ。空の上に浮かんでいて、手を伸ばしても届かない孤高さ。
 人の心を惑わすような魔性も、エアリスに通じるな、と思ったのです。
 言い換えるなら、『月』的エアリスが書きたかったのですね。
 でも、先程にも書きましたが、月は綺麗なだけではありません。
 魔性―負のイメージをも持ち合わせています。
 それをクラエア関係にも当てさせていただいたつもりです。
 甘くて口当たりがいいけれど、どこかに脆さを孕んだ・・・ゲーム中での悲劇的な結末を匂わせるような・・・そんな雰囲気を。
 と言うわけで、エアリスと絡んでもらったクラウドは、クールクラウド君が基本です。
 とっつき難くて、愛想が無くて、細かな感情の綾に超ニブチンな彼。
 エアリスがリードをとり、それを追いかけていくクラウド・・・という図ですね。
 かなり自分の好み丸出しですが、まよの中で一番しっくり来るクラエア像なのです。
 最後に、かなり『らしからぬ』彼になっていますが、・・・目を瞑ってやってください。
 最後のクラウドの暴走も、後書き書けないと言っておきながら、こんなに長々書いてしまっているのも、私の手が滑っただけではないでしょう。
 きっとみんな月の所為です。月は人の心を惑わせますから(笑)

 そして、『Moon〜』の中で語られた月のお伽噺のことですが。
 あのお伽噺と『Moon〜』には・・・ハイ、正直に言います。・・・実は、狙って書いたものがあります。
 ただ始めに断っておきたいのは、これから書く私の『解釈』は、極々私一個人のものなので、ご注意していただきたいのです。
 あくまでも、可能性の一つ、として捉えてください。
 では・・・。(と、ここからはかなり真面目モードに入ります。)

 禁じられつつも、どうしようもなく空にある月に心を奪われてしまった娘の恋は、まさに『禁断の恋』です。
 そこにある『禁断』とは、恋の対象が禁じられたモノ(物、者)であったり、『恋という感情を抱くこと自体』が禁じられた行為であったりと、様々な見方が出来ますが。
 『Moon〜』の話(クラウドとエアリス)を前提としてみれば、勿論後者にあたります。
 しかし、クラウドとエアリスが、『禁断の恋』?・・・と思われるかもしれませんが、
 「・・・・・・でも、今は解るような気がするの。想いを貫き通した娘の気持ちが。 だって、こんなに綺麗な月なんだもの。娘の気持ち、解るような気がする・・・・・・」
 『Moon〜』中にあるエアリスの言葉。実はここに、私の狙ったものの糸口があります。
 お伽噺の娘は、最後には想いをとげることが叶います。ただそれは、同時に娘の最期でもありました。
 いわば想いを叶えた代償です。
 精神的な願い(月への恋)と肉体的な願い(生への執着)は、同時には叶えられない。
 結局娘は、自らの命よりも、自らの心を選ぶわけなのですが。
 ・・・どうでしょう?お伽噺の娘とセトラのエアリスと、重なるものがないでしょうか?
 ホーリーを求めたエアリス。そして、忘らるる都での悲劇。
 自分で言うのもおこがましいのですが、お伽噺の娘とエアリスは、互いに合わせ鏡の関係になっています。
 村の掟に従い、母親の戒めを守って生きてきた娘。
 究極の目的『約束の地』を求めて、星の声を聞きながら終わりない旅を続ける、セトラの使命を架せられていたエアリス。
 そんな彼女達には、言わば『心』は無用の産物です。
 与えられた使命と役割をまっとうしさえすれば・・・もっと言ってしまうと、それらを果たし得る意志なき肉体さえあればいいのです。
 ・・・えらく残酷ですね(汗)
 でもそれが至上の幸福に繋がる(『約束の地』、ですね)と、彼女達を取り巻く世界の中では信じられているわけなのです。
 ところが、ある時彼女達は出会ってしまいます。
 掟に反する存在。そして。
 ・・・終わりない旅を止めてしまう可能性のある存在に。
 そのモノに抱く想いは、・・・恋。
 彼女らを取り巻く世界(運命)には、『心』や『意志』を彼女達が持ってしまうことは、障害以外の何物でもありません。
 だからこそ彼女達には、『恋』は禁じられたものなのです。
 禁じられたものであるからこそ、熱く熱く燃え上がる炎。
 娘のもエアリスのそれも、決して情熱的な灼熱の恋というわけではありませんが、どんなことが起きようと決して揺るがない内なる情熱と強さを秘めています。
 『禁断の恋』が彼女達に与えるのは、何よりこの強さです。
 大切なものを大切にしたい、そう願う心が。
 大切なものを持っているからこそ、彼女達は強くなれるのでしょう。
 その想いはもう、『恋』とは呼べません。『恋』というよりも、『愛』です。
 彼女達の『禁断の恋』は、それ以上のものがない愛――『至高の愛』です。
 そして、彼女達が求める『約束の地』は、上記で書いたそれとは別物です。
 自分が真に大切に想う――愛するモノの存在する場所。それが、『彼女達自身の』約束の地なのです。
 ただ、ここで誤解されてしまいそうなのは、娘もエアリスも『肉体的な死』によって願いを成就させてしまうところです。(『心』は生きていますよ。あしからず)
 私は『自己犠牲』を『至高の愛』と言っているわけではありません。
 『至高の愛』を貫いた両者ではありますが、お伽噺の娘とエアリスには、唯一相違点があります。
 それは、エアリスはいくら大切なモノの為とはいえ、簡単に命を投げ出すことは決してしない、という事です。
 いつも「今度は・・・、明日は・・・」と未来に希望を持っていたエアリス。
 もし、愛するモノと自分の命が両天秤に掛けられたとしても・・・エアリスは、片方だけを選ぶことは絶対しません。
 片方しか選べないことを解っていても、それでも彼女は両方を護ろうとする、そんな風に思います。
 愛するモノと共に生きたい。その強い願い。運命を変えようとする、強い意志の力。
 それがエアリスの愛し方ですから。
 だから、エアリスはクラウドに、
 「わたしの居場所は『ここ』だから。・・・ずっと傍に居るから」
 ・・・こんな言葉で伝えているのです。 

 長々語ってしまいましたが、真面目モードもここまでです(笑)
 口を酸っぱくしても強調しておきたいのですが、上に書いた解釈が唯一のものではありませんよ。
 出来るだけ主観をいれずに、素っ気無い、無色透明なお伽噺にしようと意識して書いた、というのも事実ですから。
 だから、あのお伽噺をどのような話と捉えるかは、読んで下さった皆様次第です。
 どうか皆様の色に染めてください(笑)

 では、度重なる失礼を深くお詫びしつつ、今後はきっちりお約束を守ることを心に誓いつつ(笑)
 SALTさんに心からお礼を申し上げます。
 どうもありがとうございました!
 次も・・・はい、頑張ります。(言ったからにはやらなければ!笑) 

※管理人註……2001.8 まにまに文庫再掲載にあたり、加筆・訂正されました。




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